第80章 気にしない人は、もちろん緊張しない

死んだ人間に、どうして意識があるの――。

じゃあ……誰かに助けられた?

そう思った瞬間、激しい電子音の「ピッ、ピッ、ピッ……」と、聞き覚えのある声が重なって耳に届いた。

「落ち着いて。今は安全だよ」

今度は、はっきり聞こえた。

阿部蓮太郎だ。

その名を思い出しただけで、さっきまでの焦りがすっと鎮まっていく。有岡里穂は大きく息を吸い、ゆっくりと濁った息を吐き出した。重かったまぶたが、少しずつ持ち上がる。

「目、覚めたね」

阿部蓮太郎は里穂の瞳を見て、ぱっと表情を明るくした。

里穂は周囲を見回す。視界いっぱいの白。耳元では機械の規則的な電子音。鼻を刺す消毒液の匂い。

「私……...

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